酒さ
「酒さ」とはいわゆる赤ら顔のことで、病名からは「酒」が関係しているように思えますが、アルコールが関係しているという証拠はない病気です。
生命にかかわるような病気でないこと、アジア人種には重症な方が少ないことから広く認知されておらず、顔面の症状が主体で飲酒好きとの印象を与えるため、ご本人にとっては大きな悩みになっていることが多いようです。
症状と病期
20歳前よりくりかえす顏のほてりや発赤として発症し、やがて30歳から40歳代になると鼻や頬、額を中心に持続性の赤ら顏(紅斑毛細血管拡張型)になります。症状がすすむとニキビ、赤鼻(丘疹膿疱型)が加わります。サンタクロースのおじいさんが典型的です。重症例では目の炎症や鼻の変形、隆起(鼻瘤)が出現します。男性に多く、芥川龍之介の「鼻」の主人公のお坊さん(禅智内供)がそうではないかと言われています。
病因
病気のメカニズムは最近の研究で次第にわかってきていて、皮膚の血管や免疫に関係した異常があるようです。しかし、それがなぜ起こるかという根本的原因については残念ながらわかっていません。増悪させる因子として紫外線、胃腸障害(便秘や下痢、消化不良など)、温度変化や香辛料、アルコールなどが知られているので、できるだけ避けるようにしましょう。しかしながら、これらが原因であるわけではなく、アルコール同様、はっきりこの病気を引き起こすという確証はありません。
治療
同じ症状でも、患者さんによって効果のある治療法が異なる場合があります。複数の症状が重複することも多く、増悪因子も患者さんごとに異なるため、ご自身で増悪因子を確認し、増悪因子の回避をして下さい。
数年かけて変化してきた症状の場合は治療にも時間がかかります。1つの治療を少なくとも1~2か月は継続して、効果を確認しながら根気よく治療を続けていくことが必要です。(残念ながら日本は酒皶に対する治療は海外よりも遅れており、保険対象外となる薬品や治療法も含まれます。)
①紅斑毛細血管拡張型
いわゆる敏感肌の方が多くいらっしゃいます。特に女性の患者さんでは化粧品を含むスキンケア製品での増悪に留意して下さい。
- 1) 低刺激の保湿を基本とする基礎化粧品を選択する
- 2) 肌に優しい洗顔法、薬や化粧品の外用法の確認する
- 3) 紫外線による増悪を防ぐためサンスクリーン剤を外用する
- 4) 赤ら顔の外観上の改善に対して、色調を考慮した化粧品を選択する(黄色系のベースなど)
固定した血管拡張やび漫性の紅斑に対しては、色素レーザーも有効な方がいらっしゃいます。
≫上記の治療やご指導を行っても症状が治まらない方で、自費治療もご検討中の方は「赤ら顔」へ
②丘疹膿疱型
①に加え基本的にはニキビと同じ治療が主体となります。
- 長らく海外でのみ酒皶に保険治療薬として認可されていたロゼックス®ゲル(0.75%メトロニダゾ ール)が2022年より国内でも保険で処方可能になりました。作用機序としては抗菌・抗原虫作用以外に抗酸化・抗炎症作用があり、スキンバリアも改善するとされていますが、主な副作用に局所刺激があります。丘疹・膿疱のみに外用します。
- 脂漏を抑える目的で使用される硫黄カンフルローション(海外で認可されているサルファ剤の代用)は以前より国内で認可されている数少ない外用剤ですが、刺激感があるため、使用の際には注意が必要です。
≫上記の治療やご指導を行っても症状が治まらない方で、自費治療もご検討中の方は「赤ら顔」へ
イオウカンフルローションの塗り方
最初の1週間は、上澄み液を、夜1回、紅斑部も含め症状のある所に外用します。副作用がなければ、次の週は使用前によく振って同様にご使用下さい。さらに副作用がなければ、1日2回朝・夜外用して下さい。乾燥しやすいので、保湿剤は必ず併用して下さい。
- 脂漏が多い方、脂漏性皮膚炎と合併している方は脂漏性皮膚炎の治療が有効な事もあります(脂漏性皮膚炎の治療説明書をご参照下さい)。
- 耐性菌の心配がないことから漢方薬を選択することもあります。清熱作用を有する漢方薬(越婢加朮湯、黄連解毒湯など)は酒さとともにむくみも改善され、体質改善にもつながるようです。
③鼻瘤
①+②の治療に加え、炭酸ガスレーザーや形成外科的な治療が必要になってきます
酒さ様皮膚炎
ステロイド外用薬によって酒さに大変よく似た皮膚炎が起こった状態です。顔や前頚部の皮膚は薬をたくさん吸収しやすいので、他の場所の皮膚と比べてどうしてもこのような反応が起こりやすいといわれています。そこで、顔にステロイドの塗り薬を使用する場合はできるだけ短い期間にとどめるべきなのですが、なかなか元々の顔の皮膚炎が治まらず、ステロイドの使用が長めになってしまうと発症します。しかし、それぞれの患者さんが、どれくらいの期間で酒さ様皮膚炎という状態になるかがわかればいいのですが、それには個人差があって事前に予測することは不可能です。塗るのを短い期間にとどめるべきということは皮膚科医であれば誰しもわかっている事なのですが、一方では元々の皮膚の病気も治さなくてはいけない。もし十分治っていないのに中途半端にやめてしまうとかえって皮膚炎が増悪してしまうので、判断の難しいところです。
治療はステロイド外用薬の影響であることは確かなので、これをやめないといけません。問題はそうすると顔全体が赤く腫れてじくじくしてきてしまうこと(離脱反応)です。対症的に抗アレルギー剤や保湿剤・ニキビと同じ治療を行いつつ、何とかがまんしていただくと皮膚の表面が次第にかさかさになってきて角質がとれるとともに治まっていきます。離脱反応は治療の経過中に何回か繰り返すことが多いのですが、次第にその症状の程度は軽くなっていきます。そういう点では少し気持ちを楽にもって頂く方がいいです。タクロリムスという免疫抑制剤も、頻度は少ないですが酒さ様皮膚炎を起こすことが分かってきましたので注意が必要です。
つらい時期もありますが、何とかご一緒に乗り越えていきましょう。
















